兄弟と育んだ創作の原点―血のつながりが生むアイデア
芥見下々先生は、ご自身が長男として育ったご家庭の影響を強く受けています。
兄弟は妹が2人おり、小学生の頃から兄妹3人で“真夜中の読書会を開いては、それぞれ好きな怪談やホラー小説を朗読し合ったそうです。
妹たちが怖がって耳元で囁くように再現した怪談を聞いた教師やクラスメイトの反応に興奮し、
その体験が後の『呪術廻戦』のホラー要素の原点となりました。
また、下々先生は「エグい演出は、身近な人のリアクションを観察することでリアルになる」と
語っています。
家族の驚きや恐怖の仕草を徹底的にメモし、自宅のリビングを舞台に即興で再現する中で、
読者を引き込むリアルな芝居作りが磨かれました。
地元・岐阜の風景―異界と日常が交錯する舞台づくり
岐阜県出身の芥見先生は、田舎の山あいや河川敷、鉄橋の下など日常の裏側を自らの
作品世界に取り込むことで知られます。
幼少期のお気に入りスポットは、曇りの日にだけ水面が幽玄に映る養老公園の池でした。
その静かな水面に映った逆さの木々を見て「世界が反転しているようだ」とゾクッとし、
後に両面宿儺のモチーフに応用したといいます。
また、裏山の竹林で見かけた夜行性の野生動物の目光と、その場に立ちすくむ異様な空気感こそ両面の異界を感じさせる経験だったと振り返ります。
地元取材の際は、岐阜各地の怪談伝承や廃墟スポットも訪れ、読者に伝わる
背筋の凍る一コマを探し求めています。
漫画家への挑戦―デビューまでの10年
中学・高校時代には熱心に投稿活動を行い、『週刊少年ジャンプ』の新人賞には約50回以上挑戦。
しかしその度にネームが返却されるなか、編集部のコメントを大切にノートにまとめ、
約2年かけて「魅せるコマ割り」と「心をえぐる心理描写」を徹底研究しました。
大学進学後は自主制作同人誌を発行。仲間と小さな即売会を開き、読者の生の反応を得ることで、キャラの敗北や共感”を演出するコツを学びました。
23歳の時、『東京都立呪術高等専門学校』という前日譚を『ジャンプGIGA』に掲載。
その完成度が評価され、2018年に『呪術廻戦』として正式連載が決定しました。
先生曰く「何度もノートを破ったり、人前で恥をかいた経験が、今の作品の“痛みを伴う青春の
リアリティに直結している」とのことです。
裏ワザ・豆知識―執筆速度とネーム術
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24時間サイクルネーム法:
24コマ×24時間で1日分のネームを描き切る1時間1コマチャレンジを定期的に実施。
勢いと緊張感を維持することで、緩急ある展開を作り出す。 -
音楽プレイリスト活用:
戦闘シーン用、日常シーン用、ホラー演出用……とシーン専用BGMを切り替えながら
ネームを執筆。没入度が上がり、キャラの動きに合わせてコマが自然と浮かぶ。 -
自作読者席テスト:
ネーム完成後、仲間やアシスタントに読者ポジションでト書きを読んでもらい、
笑い・恐怖・共感のタイミングをチェック。編集会議前の最終調整に役立てる。
口コミ―業界人も唸るテクニカルマンガ
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「ページ送りの間で呼吸を止めさせる技がすごい」
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「心理的境界線を引き裂くコマ構成が鳥肌モノ」
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「戦闘シーンのリズム感はまるで音楽。ネーム段階からBGMが聞こえる」
まとめ―兄弟との笑い声から世界を震わせるホラーへ
兄妹3人の読書会、岐阜の澄んだ池、投稿返却の涙……。すべてを血肉に変えて『呪術廻戦』の
ダークファンタジーは生まれました。
これからも芥見先生は日常の裏側を探訪し、新たな呪いと希望を織り交ぜた物語を
提供してくれることでしょう。
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