幼少期からの演技ごっこと兄弟の絆
1968年2月7日、ソウル特別市近郊で生まれたホン・リナ(洪利奈)は、2人の兄と1人の妹を
持つ4人きょうだいの末っ子でした。
幼い頃から兄弟で遊ぶ際には、近所の草むらや自宅のリビングを即席の舞台に見立て、兄が台詞を吹き込み、妹は照明役として懐中電灯を操り、ホン・リナ自身はヒロイン役を演じていました。
この即興劇は、演技の楽しさやチームワークを学ぶ貴重な場であり、「人を魅了する喜び」を
身をもって体験したことで、将来の女優への扉が開かれたのです。
デザインの学びからドラマデビューへ
明知専門大学の金属デザイン学科を卒業後、ホン・リナは雑誌や広告のレイアウトを手がける
商業デザイナーとしてキャリアをスタート。
デザイン業務で培った配色や構図の知識は、後の画面映えする演技につながりました。
その後カメラマンのアシスタントとして被写体の角度や光の当て方を学び、
「自分自身を映し出す立場として表現したい」と女優への志を固めます。
1999年、スカウトをきっかけにミュージックビデオへ出演。翌2000年、MBCドラマ『青い教室』で正式デビューを果たし、デザイナー時代の視覚センスが存分に生かされた自然な立ち回りが高く評価されました。
初期出演作で磨いた演技力
デビュー直後は『青い教室』のほかに『秋にきたお客さん』『チョグァンジョ』『姉妹たち』
『夫の女』など、1987年だけで7本のドラマに出演。
多忙なスケジュールの中で幅広い役柄を経験し、短期間で演技の引き出しを増やしていきます。
とりわけ『総合病院』(1994年)や『息子の女』(1994年)では医療従事者や母親役を熱演し、表情に抑揚をつける技術を身につけました。
1998年の映画『ス』で見せたハードボイルド
翌年公開の映画『ス』(原題『壽』)では一人二役に挑戦。主人公テスとテジンの二重人格を、
微妙に異なる視線や仕草で演じ分け、生身のアクションにも積極的に参加しました。
過酷なスタント撮影中に靭帯を痛める負傷を負いながらも、最後までカメラ前に立ち続けた
その姿勢は、多くの共演者やスタッフの称賛を集めました。
『宮廷女官チャングムの誓い』での大ブレイク
2003年から2004年にかけて放映された『宮廷女官チャングムの誓い』では、主人公長今の
ライバル、チェ・グミョン役を演じ、韓流ドラマの金字塔を打ち立てました。
冷徹ながらもどこか寂しげな眼差し、宮廷の政略に翻弄される複雑な心情を、緻密な演技で表現。
アジア全域はもちろん、欧米や中東でも高視聴率を記録し、一夜にして
国際的スターとなりました。
コメディから歴史劇まで幅広い役柄
その後も『山』(1996年)で古代史を舞台にした王妃役、『大王の道』(1998年)で恵嬪洪氏を、『トンイ』(2010年、MBC)ではまた別の王妃役を好演。
コメディ演出が際立つ『ミステリーメロ危険な選択』(1987年)や、台湾ドラマ
『100番目の花嫁』にも出演し、国際共同制作の経験を重ねました。
これにより、シリアスからコミカル、史劇から現代劇まで、あらゆるジャンルを
自在に行き来できる俳優としての地位を確立しました。
プライベートと家族生活
2006年2月18日、在米同胞の事業家と米国で結婚式を挙げ、同年9月に長女を出産。
一男一女の母として、育児と仕事を両立しながら撮影に臨みました。家族と過ごす時間を週末の
楽しみにすることで、撮影期間中のストレスをリフレッシュし、表現の幅をさらに広げています。
裏ワザ・豆知識
1. カメラマン視点での動線確認:
台詞のないシーンでも、カメラ位置と照明を事前にチェックし、
自然光を効果的に浴びる動き方を自ら提案。
2. 即興ダイアログの活用:
共演者とのリハーサル時に短いアドリブを試し、現場の空気に合った台詞回しを本番で反映。
3. 舞台裏での発声法:
長時間の撮影でも声を枯らさないため、控室での発声練習と喉ケアを欠かさず、
自前ののどスプレーを持参します。
口コミ
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「グミョンの冷酷さと可憐さの絶妙なバランスが忘れられない」
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「『ス』のアクションシーンには驚きました。あれが本気の演技だなんて」
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「カメラを意識しない自然体の演技が最高に心地よい」
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「家族を大事にする姿勢が作品にも反映されていますね」
まとめ
商業デザイナーやカメラアシスタントとしての経験を経て、多彩なドラマや映画で活躍する
ホン・リナ。
幼少期の兄弟との遊び心と、デザイン視点で培った美的感覚が、彼女の演技に
独自の深みを与えています。
家族とともに紡ぐ人生経験を糧に、これからも新たな役柄で観客を魅了し続けることでしょう。
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