諫山創が刻んだ巨人狩りの軌跡・家族の支えと青春の情熱が結実した24年

#漫画家

幼少期と家族・梅農家に育まれた粘り強さ

1986年8月29日、大分県日田郡大山町(現日田市)に生まれた諫山創先生。

実家は梅農家を営んでおり、祖父の代から大切に受け継がれてきた畑では、家族全員が
早朝から収穫に励んでいました。

ご兄弟の中には3歳年下の弟さんがおり、二人で梅の木に登って遊んだり、落ちた実を集めたり
することが日常の一コマだったそうです。

青年期を通じて、農作業の厳しさとチームワークの大切さを身をもって学び、
「どんな困難も仲間と力を合わせれば乗り越えられる」という信念を育んでいきました。


学生時代・創作への飽くなき探究

大分県立日田林工高等学校では、木造建築や林業の技術を学びつつも、放課後は図書委員室に
こもって漫画や小説を読み漁りました。

とりわけ洋画の特撮ヒーローやアメコミのアクションに憧れを抱き、自作のヒーローキャラクターや巨大怪獣をノートに描き続けます。

高校時代アルバイトをしていた焼そば店「想夫恋大山店」の厨房で、鉄板の火力や食材の
ハネを見ながら「この熱気と爆発を漫画の戦闘シーンに活かしたい」と考えたこともあると
語られています。


専門学校での学び・技術と表現力の両立

卒業後、専門学校九州デザイナー学院マンガ学科に進学。

作画の基礎からコマ割り、演出まで体系的に学び、プロ講師から「絵に魂を込めること」の
重要性を教わりました。

学生時代の課題として出された短編読み切りでは、奇想天外な生物と人間の交流をテーマにした『人類VS巨人』を制作。一晩で徹夜しながら描き上げた原稿は、その後の代表作『進撃の巨人』のエッセンスを先取りしていました。


持ち込み作品とMGP佳作・芽生えた“巨人の原型

2006年、専門学校在学中に講談社主催の「マガジングランプリ(MGP)」へ
『進撃の巨人』を応募。

キャラクター名こそ未定だったものの、「人類が巨人に支配され、生き残りをかけて戦う」という構想が高く評価され、佳作入賞を果たします。

当時は連載を想定したプロットが未完成だったため、編集部から「続きが読みたい」と
熱烈なラブコールを受け、以後の方向性が一気に固まりました。


新人賞受賞・デビューへの最短ルート

2008年、『HEART BREAK ONE』で第80回『週刊少年マガジン』新人漫画賞
特別奨励賞、同年の別作品『orz』で第81回同賞に入選し、『マガジンSPECIAL』から
商業デビューを飾ります。

ギャグタッチの『orz』とダークファンタジーの『HBO』という対照的な二作で評価された
経験は、「ジャンルにとらわれず自分の表現を追求する勇気」を諫山先生に与えました。


『進撃の巨人』連載開始─絶望と希望を描く人類史詩

2009年10月、『別冊少年マガジン』創刊号で『進撃の巨人』が連載スタート。

当初は誌面後方の小さなコーナー掲載でしたが、壁一枚向こうに潜む“巨人”の恐怖と、
主人公エレン・イェーガーの激しい復讐心、仲間との絆が読者を強烈に引き込みます。

徹底した情報管理のもと伏線が張り巡らされ、キャラクターの死や裏切りが次々と襲いかかる
緻密な構成は、「週刊漫画の常識を覆す」と編集部内外で話題に。

連載1年目から口コミで評判が広まり、アニメ化、舞台化、実写化など
メディアミックス展開へとつながりました。


受賞と世界的評価─マンガ賞から野間文化賞へ

2011年、第35回講談社漫画賞少年部門を受賞し、国内外での評価が確立。

作品完結後の2021年には第3回野間出版文化賞を受賞し、漫画表現が文化として認められる
契機となりました。

さらに2023年にはフランス・アングレーム国際漫画祭で特別賞を受賞し、
「創造的なストーリーテリング」に対する海外からの高い評価を獲得しています。


私生活とネット活用─結婚発表からファンとの対話まで

2018年12月31日、自身の公式ブログで結婚を発表。「人生のパートナーに感謝している」と綴り、ファンからは温かい祝福が多数寄せられました。

趣味は総合格闘技観戦で、2002年アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ対ボブ・サップ戦をきっかけにハマり、作品中にも格闘技技術や実在の格闘家名が散りばめられています。

また作品公開後はネット上で自作の評判をチェックし、ファンからの意見を真摯に
受け止めるスタンスを貫いています。


まとめ─大山町の梅畑から世界の舞台へ

薪を積むようにコマを重ね、絶望と希望を一筆一筆描き込んできた諫山創先生。その根底には、
梅農家を支えた家族の絆と、放課後のノートに広がった無限の想像力があります。

簡単に諦めず、挑戦を重ねた24年の集大成が『進撃の巨人』という人類史詩となり、
今も多くの読者に感動と驚きを与え続けています。

次に諫山先生がどんな物語を紡ぎだすのか、これからの歩みにもぜひご注目ください。

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